レバノン人と同室になる≪十月二十九日≫ ―壱―早く眠ったせいか、今朝は早く目が覚めた。 とはいっても、太陽の陽射しが窓を通して入り込んできている。 トップレスの彼女はもう、すでにベッドにはいなくて、外出してしまってい るようだ。 ・・・・・・・残念! 10:00過ぎ、まだベッドに横たわっているイギリス人野郎に、グッバ イをしてチェックアウトを済ませる。 トップレスの彼女と別れるのは、少々つらいものがあるが、今日からはガウ ン姿の美人妻がいる。 なんか・・・・俺って、付いているのかな??? 日本へ荷物を送って、5KGも重量を減らして、軽いぞ・・・と思いき や、相変わらず公園にさしかかる頃には、荷物が肩に食い込んでくるのをや っとの思い出こらえている。 今日は、地中海らしい晴天で、直射日光を浴びると、背中に汗が流れるのを 感じてくる。 シンタグマ広場から、15~20分(歩いて)で、目的地「ISH」に到着し た。 入り口のブザーを押すと、昨日の人妻が、昨夜のまんまの姿で迎えてくれ た。 まだ寝起きなのかな?・・・・などと考えながら、ピンクのガウンに見とれ ていると、書類を突き出して、これに書けと言う。 書類にサインをして、料金を支払ってキーを受け取る。 このきーと言う奴、四個もある。 人妻がキーの説明を始めた。 奥さん「このキーは、門のキー。このキーは、玄関のキ ー。そして、このキーは、3階のフロアーのキー。わ かりますか?そして、最後のキーが、あなたのロッ カーのキーです。良いですか?」 俺「イエス!」 奥様「このキーは、旅発つとき私に返却してくれたら、 60DMはあなたにお返しします。わかりましたか?」 俺「イエス!」 奥さん「それでは、これも上に持っていってください。」 シーツを渡される。 奥さん「このシーツは、毎週土曜日の朝に持ってきてくれ れば、新しいシーツと交換しますからね!わかりま したか?」 ニコニコしながら、枕カバー一枚とシーツ二枚・毛布二枚を渡してく れた。 俺「ありがとう!」 * 居間のドアを開けると、大理石の階段が上に伸びている。 3階が、我々旅行者のためのFloorで、ドアを開けると電話室。 次のドアを開けると、広間になっていてソファとかストーブが置かれてあ り、壁には禁止事項が英語とギリシャ語で書かれている。 二つの大きな鏡も壁にかけられていた。 正面に、トイレ・シャワー室と洗濯室がある。 左右二つずつの部屋が設けられていた。 俺の部屋は、「Bの3」でロッカーは、NO12. 左の奥の部屋だ。 もちろんドミトリー。 他の部屋は、三つとも女性達が使用していると言う。 ドミトリーとは言え、男女別々になっている、健全なドミトリーだ。 ドアをあけると、正面にベランダに通じている大きな掃き出し窓、その左に これも大きな窓。 そのどちらとも、白いレースのカーテンが吊られていて、清潔感いっぱいの 部屋だ。 俺には似つかわしくない部屋かも知れない。 部屋は十畳ほどの広さで、七つのロッカーと七つのベッドが置かれている。 そのうちの三つは、二段ベッド。 つまり、二段ベッドが三つに、普通のベッドが一つ置かれていると言う按配 だ。 七人部屋だ。 そのうちの五つがもうすでに塞がっていた。 ドイツ人・カナダ人・レバノン人・アメリカ人・イギリス人の五人だ。 そして今日入所した、日本人の俺を含めて、六カ国の人間がこの狭い部屋で 寝泊りを一緒にすることになったのだ。 * 一番奥の下段と二段ベッドの真ん中の上段が空いていた。 真ん中の上段にベッドを作ることにした。 ほとんどの住人が外出中であったが、住人が一人だけいて、ベッドを作って いる俺をジッと見つめている。 窓の下の普通のベッドの住人らしく、聞いてみるとレバノンから来たと言 う。 アラブ人だ。 英語で話しかけると、「アラビックとフランス語しか話せません。」 とフランス語でまくし立て始めた。 ロッカーに荷物を入れて、下に降り台所を覗くと、奥さんが相変わらずピン クのガウンのまま、俺に気づかず一心不乱に調理をしている。 声をかけずそのまま外に出る。 ジャンル別一覧
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